【初級】ブロックチェーン講座について

1. ご挨拶 鎖塊 当サイト運営の鎖塊知能(さかい ともよし)です。当セクションでは、ブロックチェーン学習の初級カリキュラムを取り扱っています。全ての講義は会話形式で行われますので、初心者の方でも気軽に読んでいただければと思います。私は講義には参加しませんが、皆さんの良い学びとなることを祈っています。 江輝 皆さん、本日は江輝ブロックチェーンアカデミーへようこそお越しくださいました。当学院は『誰一人、取り残さない学びを』をモットーに、分散型技術の普及と実践教育を目指しています。創立者兼学長の江輝智司(えてる さとし)です。 結 はじめまして、弧鎖塊結(こさかい ゆい)と申します。私も皆さんと一緒に先生の講義を受けることになりました。ブロックチェーンのことはほとんど理解できていないので、皆さんと一緒に少しずつ学んでいければと思います。よろしくお願いします。 円 私は弧鎖塊円(こさかい まどか)!今日は皆に挨拶するためにお姉ちゃんについてきました!私は講義は受けられないけど、帰ったらちゃんと教えてね、お姉ちゃん! 2. 初級カリキュラムについて 江輝 皆さん、当学院の初級カリキュラムについてご説明いたします。このコースは初学者の皆さんを対象に、ブロックチェーン技術を基礎からしっかり学んでいただくために設計されています。 結 まずは基礎からゆっくり学んでいきましょう。 江輝 まず、第1章では『ブロックチェーンとは何か』を扱い、分散型台帳の基本概念と中央集権型システムとの違いを図解で理解します。 結 分散型台帳、中央集権型システム… 江輝 次に第2章『ブロックチェーンはどう動くのか』では、トランザクションの生成からノード検証、ブロック生成までの一連の流れをステップごとに追い、内部の仕組みを体感していただきます。 結 トランザクション、ノード… 江輝 第3章『ブロックチェーンをどう使うのか』では、ビットコインをはじめNFTや医療記録、投票システムなど、身近なユースケースを通じて用途とメリットを学びます。 結 NFT… 江輝 そして最終章の第4章『ブロックチェーンはどうなるのか』では、スケーラビリティやエネルギー消費といった課題を整理し、レイヤー2やゼロ知識証明といった最新技術まで概観します。 結 スケーラビリティ、レイヤー2、ゼロ知識証明… 結 先生、難しい単語がたくさん出てきて私、少し不安になってきました… 江輝 当学院は『誰一人、取り残さない学びを』がモットーです。わからないところはしっかりと説明していきますから、安心してください。 結 ありがとうございます!頑張ります! 円 お姉ちゃん、頑張ってねー! 江輝 それでは皆さん、一緒に学びの旅を始めましょう。

6月 16, 2025

【初級】第1章:ブロックチェーンとは何か

1. はじめに 江輝 この記事では、私と結さんが、中央集権型システムと分散型システム、そしてそれを応用したブロックチェーン技術について、対話形式でわかりやすく学んでいきます。まずは、インターネット上のデータ保存がどのように行われてきたか、基本的な仕組みから確認していきましょう。 2. 中央集権型システムの特徴と課題 江輝 結さん、私たちが普段使っているネットサービスは、どこか一か所のサーバに情報が集まって管理されていることが多いのをご存知ですか? 結 ええと……たとえばSNSとかネットショップとかですか?なんとなく、企業のサーバーで全部まとめて保存されてるイメージがあります。 江輝 その通りです。このように、特定の企業や組織がすべてのデータと機能を集中管理する仕組みを「中央集権型システム(Centralized System)」と呼びます。システムの制御や判断が一つの場所に集約されていることで、管理がしやすい一方、トラブルに弱いという側面があります。 結 どういうときにトラブルになっちゃうんですか? 江輝 例えば、そのサーバーがハッキングされたり停電や機械トラブルで止まった場合、ユーザーはサービスを一切利用できなくなります。これを「単一障害点(Single Point of Failure)」と呼び、中央集権型の最大の弱点です。 故障や攻撃で全サービスが停止しやすく、単一障害点が最大のリスクに 結 あ、全部一箇所に頼ってると、そこがダメになったら全部ダメになっちゃうんですね。 江輝 まさにその通り。特に個人情報や金融データのような重要な情報が狙われやすい現代において、単一障害点を抱えることは大きなリスクになります。 江輝 もちろん、現代の多くの企業サービスでは、サーバーの冗長構成やバックアップ体制、フェイルオーバー、CDNの活用など、障害への対策はしっかり取られています。それでも、極端な集中管理に依存する構造そのものにリスクが残るという点が、分散型の発想の出発点でもあるのです。 3. 分散型システムの概念 江輝 こうした中央集権の問題点に対して考え出されたのが「分散型システム(Distributed System)」です。 結 分散っていうと……データをバラバラにするんですか? 江輝 良い質問ですね。分散型では、複数のノード(コンピュータ)がネットワーク上で互いに連携しながら、全体の仕組みを動かします。データや処理を一か所に集めるのではなく、それぞれのノードが役割を持って、相互に情報をやりとりします。 結 それなら、どこか1つのノードが止まっても、他のノードでカバーできそうですね! 江輝 そうです。これにより、可用性(Availability)や耐障害性が飛躍的に向上します。特に、ノード同士がP2P(ピア・ツー・ピア)でつながることで、中央管理者なしでも情報のやりとりや整合性の確認ができるようになります。 故障や攻撃でノードが停止しても、他のノードでサービスを継続して提供できる 結 自動でお互いにチェックし合ってるような感じなんですね。なんか、チームワークって感じで頼もしいです。 4. ブロックチェーンが実現する分散台帳 江輝 分散型システムをさらに発展させたものが、私たちが学ぼうとしている「ブロックチェーン」です。ブロックチェーンは、分散型ネットワーク上で正確な取引履歴を管理するための台帳(Ledger)のような仕組みです。 結 台帳って、昔のお店で売上を記録してた帳簿みたいなものですか? 江輝 まさにそのイメージです。ブロックチェーンでは、取引データを「ブロック」という単位にまとめ、それぞれのブロックに「ハッシュ」という指紋のような値を付けて、鎖のように順番につなげて記録していきます。 1つ前のブロックのハッシュ値をキーにして全てのブロックが1列に繋がっている 結 指紋?ハッシュってなんですか? 江輝 ハッシュとは、任意のデータから固定長の文字列を作り出す関数のことです。特に次の3つの性質が、ブロックチェーンの安全性を支える重要なポイントとなっています。 性質 説明 一方向性 ハッシュ値から元のデータを復元することがほぼ不可能である 衝突耐性 異なる入力から同じハッシュ値が出る確率が極めて低い 高感度(Avalanche) わずかな入力の違いでも、まったく異なるハッシュ値が生成される 江輝 たとえば「block」と「blocks」のように、1文字違うだけでもまったく別のハッシュ値になります。これにより、過去の記録がほんの少しでも書き換えられると、すぐにそれが分かる仕組みになっているんです。 改ざんされたブロックはハッシュ値が変更されることにより、次のブロックとの連結が消失しチェーンから排除される 結 なるほど!ハッシュはデータが改ざんされていないことを確認するための指紋なんですね!そして、チェーンの途中を改ざんすると、次のブロックが持っている指紋と一致しないから、すぐバレちゃうんですね。 江輝 さらに、ネットワーク上のすべてのノードがこのチェーン全体をコピーして保持しているため、誰か1人が不正をしても、他の多数のノードが正しい記録を保持している状態が保たれます。これが「分散台帳」と呼ばれる理由です。 結 みんなで同じノートを持ってるってことか……それなら安心ですね! 5. まとめと次章予告 江輝 中央集権型システムは一元管理がしやすい反面、単一障害点のリスクが高い。 分散型システムは可用性と冗長性に優れ、障害に強い構造を実現できる。 ブロックチェーンは分散型の仕組みを活かし、正確で改ざんが困難なデジタル台帳を提供する。 次章では、このブロックチェーン上で取引がどのように生成され、どのようにして新しいブロックとして台帳に追加されるのか、その一連の流れを体験的に学んでいきます。 ...

6月 16, 2025

【初級】第2章:ブロックチェーンはどう動くのか

1. はじめに 結 前回、ブロックチェーンって「みんなで同じノートを持ってる」って聞いて安心したんですけど…そのノートって、どうやって書かれていくんですか?ブロックって「チェーン状に並んでて、それぞれ前のハッシュを覚えてる」っていう仕組みでしたよね?それがどうやって動くのか気になります。 江輝 ブロックチェーンの仕組みについて興味を持ってくれたようでなによりです。今回の記事では、代表的なブロックチェーンであるビットコインのネットワークを題材にして、取引がどのように処理され、記録されていくのかを順を追って学びましょう。 2. 取引(トランザクション)のはじまり 結 ビットコインを送るって、誰かが誰かに通貨を移すってことですよね?でも、実際にどういう手順で送るんですか? 江輝 いい質問ですね。ビットコインでの送金や受け取りといった記録は「トランザクション」と呼ばれます。トランザクションとは、過去に受け取ったビットコインを使って、新たな送り先に送金するという命令書のようなものです。次の図を見てください。 ※簡略化のため、送金手数料の記載を省略しています。 江輝 まずユーザーは、送りたい相手のアドレスと金額を指定します。そして、自分が過去に受け取ってまだ使っていないビットコイン(UTXO)を入力として選び、それらをまとめてトランザクションを構成します。この図では、私が過去に受け取った1.0BTCのうち、0.8BTCを結さんに送金し、残りを私に戻すトランザクションを作成しています。 江輝 このとき、自分が正当な持ち主であることを証明するために入力側に「電子署名」を行います。これは、自分の秘密鍵で取引内容に署名することで、誰でもその署名が正しいかを確認できる仕組みです。 結 電子署名って、「この取引は私がやりました」って証明する仕組みなんですか? 江輝 その通りです。電子署名があることで、そのトランザクションが本人によるものであり、かつ途中で改ざんされていないことも保証できます。 江輝 署名されたトランザクションはネットワークに送られ、周囲のノードたちがそれを受け取ります。ノードは署名や残高、二重支払いの有無などを確認し、問題がなければその取引を未承認トランザクションとしてプールに保管します。 結 未承認ということは、この後誰かが承認をするということですか? 江輝 はい。そして、このトランザクションの承認プロセスがビットコインの安全性を支える上で非常に重要な要素となっています。 3. ノードによる検証とブロック化 結 トランザクションを受け取ったノードは、どうやってその取引が本当に正しいものか判断するんですか? 江輝 前節でもお話したように、主に3つのポイントを確認します。まずは電子署名が正しく、自分のアドレスの秘密鍵から発行されたものであること。次に、送信者が実際にその金額分の未使用コイン(UTXO)を持っているか。そして、同じコインが別の取引にも使われていないか、つまり二重支払いのチェックです。 結 なるほど…たしかに、それを見落としたら不正が起きちゃいますもんね。 江輝 そうなんです。そして、こうして検証された未承認トランザクションは一時的にノードに保管され、マイナーと呼ばれるノードたちによってブロックにまとめられていきます。 江輝 ビットコインでは、おおよそ10分に1回のペースで新しいブロックが作られます。マイナーは、未承認トランザクションの中からいくつかを選び、1つのブロックにまとめたうえで、一定の条件を満たすハッシュ値を見つけるという「計算競争(マイニング)」に挑戦します。次の図を見てください。 ※簡略化のため、ブロックに含まれる情報の一部を省略しています。 結 なんかちょっと複雑な感じの図ですね… 江輝 少し複雑に見えるかもしれませんが、ここはビットコインの安全性を支える非常に重要な部分です。ぜひ理解しておきましょう。前回の講義で、新しいブロックをチェーンにつなぐキーが、直前のブロックのハッシュ値であることを説明しましたね。 ...

6月 16, 2025

【初級】第3章:ブロックチェーンをどう使うのか

1. はじめに 江輝 前回は、ビットコインのトランザクションがどのように作られ、承認され、ブロックにまとめられるかを一通り見てきましたね。今回はそのブロックチェーン技術が、実際にどんな場面で活用されているのかを見ていきましょう。 結 ブロックチェーンの仕組みを学んだら、今度はそれが「どう使われてるか」ってことですよね。いまのところあまりピンと来ていないので、授業が楽しみです。 江輝 実はブロックチェーンは、通貨だけでなく、アートやゲーム、さらには選挙や医療まで、さまざまな分野で使われ始めています。まずはやはり、ブロックチェーンを代表する存在「ビットコイン」の活用から振り返ってみましょう。 2. ビットコイン:仲介者をなくす通貨の仕組み 江輝 これまで、銀行などの仲介者がいなければ、他人にお金を送るのは難しいとされていました。ところがブロックチェーンでは、その役割を「ネットワーク全体」が担うことで、銀行なしに送金が可能になります。 銀行などの仲介者を介さずに直接ユーザ同士で資金移動を行う。 結 トランザクションをみんなで確認して、ちゃんとブロックに記録して…そうやって送金するってことなんですよね。 江輝 そうです。そしてこの仕組みによって、国境を越えた送金や、銀行口座を持たない人々にも金融サービスを届けることが可能になりました。新興国ではスマートフォンだけでビットコインを使う事例も増えています。 結 いままでお金が届かなかった人にも、ブロックチェーンで届くようになるって…すごいことですね! 3. NFTとデジタルアート:本物を証明する技術 江輝 次は、ブロックチェーンの「改ざんできない記録」という特徴を活かした活用例です。最近、アートの世界で「NFT」という言葉を聞いたことはありませんか? 結 あ、あります!SNSで「このデジタル絵が○○万円で売れた!」みたいな投稿を見たことがあります。 江輝 そのとおり。NFT(非代替性トークン)は、ブロックチェーン上に記録された「唯一無二のデジタル証明書」です。たとえばあるイラストをNFT化すると、その所有者や過去の売買履歴がブロックチェーンに記録され、誰でも確認できます。 デジタルデータの所有権や売買履歴を改ざんできない形で保持する。 結 コピーはできても、「本物はこれ」ってちゃんと証明できるんですね! 江輝 そうです。しかも、この記録は誰にも改ざんされません。アーティストにとっても、自分の作品が誰の手に渡ったのか追跡できるのは大きな価値です。 結 私の作品も、NFTにして販売できたら…なんて夢が膨らみます! 4. ゲームとアイテム経済:プレイヤーが本当に所有する 江輝 ゲームの世界でもブロックチェーンは注目されています。これまでのゲームでは、アイテムやキャラクターのデータは全て運営企業のサーバーに保存されていました。 結 たしかに、ある日ゲームが終了したら、今まで集めたアイテムが全部消えちゃったこともあります… 江輝 そこで登場するのがブロックチェーンゲームです。ゲーム内のアイテムをNFTとして管理することで、プレイヤーがその所有者として記録され、自由に売買できるようになるのです。 ゲームアイテムをNFT化することで、運営企業に依存しない形で所有権を得る。 結 ということは、ゲームの世界で手に入れたものを、他のプレイヤーに売ったり、別のゲームに持ち込んだりできるんですか!? 江輝 実現されつつありますね。アイテムに経済的価値がつくことで、「プレイが資産になる」時代が到来しつつあるのです。 結 遊んでたらおこづかいが増える…夢みたいです! 5. 社会インフラへの応用:投票・医療・物流 江輝 最後に、少し社会的な話題にも触れておきましょう。ブロックチェーンは、信頼性と透明性が求められる分野にも応用されています。 結 どのような分野で利用されているのでしょうか? 選挙、医療、物流などさまざまな分野でブロックチェーンが利用されている。 江輝 たとえば「選挙」です。投票内容をブロックチェーンに記録すれば、改ざんされず、誰がいつ投票したかも記録に残る。しかも投票結果をリアルタイムで公開できるシステムも構想されています。 結 それは…すごく大事な使い方ですね! 江輝 他にも、医療では「電子カルテの共有」に。物流では「製品の出どころを記録する」ことに使われています。つまり、どの農場で育てられ、どの工場を経由し、どの店に届いたか──全てが記録されるわけです。 結 買ったコーヒー豆がどこの畑で育ったかも分かるってことですか!? 江輝 ええ。消費者にとっては安心材料になりますし、生産者にとっては品質を証明する手段にもなりますね。 6. まとめ 江輝 本章で学んだことを整理しましょう。 ...

6月 17, 2025

【初級】第4章:ブロックチェーンはどうなるのか

1. はじめに 江輝 結さん、これまでの講義でブロックチェーンの基本構造や利用例について学びましたね。今回はその応用をさらに広げるために、いま技術が直面している課題と、それを乗り越えるための最新の取り組みに焦点を当ててみましょう。 結 はい!すごく興味あります。でも課題って…そんなにたくさんあるんですか? 2. ブロックチェーンが抱える課題 江輝 ブロックチェーンは非常に画期的な技術ですが、いくつかの大きな課題を抱えているのも事実です。その代表例が「取引処理の遅さ」と「電力消費の大きさ」です。 結 あっ、ビットコインのマイニングってすごく電気を使うというお話でしたね。 江輝 そうですね。ビットコインでは、1件の取引が承認されるまでに10分以上かかることもあり、そのためのマイニング作業に大量の電力が使われています。 結 たしかにニュースでも「環境に悪い」って言われたりしますよね。 江輝 そうですね。そこで登場するのが、「PoS(プルーフ・オブ・ステーク)」という仕組みです。これは、計算力ではなく、仮想通貨の保有量に応じて取引の承認権が与えられる仕組みで、消費電力を大幅に削減できます。 プルーフオブステークでは仮想通貨の保有量に応じて取引の承認権が与えられる 結 パワー勝負じゃなくて、信頼で選ばれるって感じなんですね! 江輝 とても良い例えですね。実際にイーサリアムというブロックチェーンは、2022年に行われた大規模なアップグレード「The Merge(マージ)」によって、従来のPoW(プルーフ・オブ・ワーク)からPoSに切り替えられました。 結 イーサリアムってよく聞くけど…ビットコインとは違うんですか? 江輝 ええ、違います。イーサリアムは、仮想通貨『ETH(イーサ)』を使った取引に加えて、「スマートコントラクト」と呼ばれる自動実行されるプログラムを組み込める特徴があります。そのため、NFTやDeFiといった分散型アプリケーション(DApps)の多くがイーサリアム上で展開されています。 江輝 次に、「スケーラビリティ」も大きな課題です。これは、たくさんの取引を同時に処理する能力の限界のことです。 結 あ、つまり「遅い」っていうのとはまた違って、「混雑しやすい」ってことなんですね。 江輝 その通りです。たとえばイーサリアムのレイヤー1では、1秒に15件ほどしか処理できません。レイヤー1というのは、基本機能を直接支えるメインのブロックチェーンを指します。安全性や信頼性は高い一方で、取引量が多くなると処理が追いつかず、手数料が高騰したり、反映に時間がかかったりします。 結 それって、人気のネットショップが混みすぎて注文できなくなるみたいな感じですね。 江輝 まさにそれです。そうした問題を解決するために登場したのが「レイヤー2技術」です。これは、取引の大部分をブロックチェーンの外で一時的に処理し、後からまとめてレイヤー1に記録する仕組みです。たとえば「ロールアップ」はその代表例で、Optimistic Rollupでは1秒に約2,000件、ZK Rollupでは4,000件以上の処理が可能です。 ロールアップにより単位時間当たりに実行可能なトランザクション数が飛躍的に向上する。 結 すごい!外でまとめて、あとで書き込むって、まるで宅配便の仕分けセンターみたいです。 江輝 他にも、ビットコインの「ライトニングネットワーク」という仕組みでは、理論上100万件/秒の処理性能を実現でき、手数料も0.001ドル未満と非常に低コストです。 結 それなら、毎日何百万人が使っても安心ですね。 3. 次世代を支える最新技術 江輝 スケーラビリティのほかに、もう一つ重要なテーマが「プライバシー」です。ブロックチェーンは誰でも取引履歴を見られるという透明性が強みですが、その分、取引内容まで公開されてしまう点が懸念されることもあります。 結 たしかに、あんまり知られたくないことまで見られちゃうのはちょっと心配かも… 江輝 そこで登場するのが「ゼロ知識証明(ZKP)」という暗号技術です。ZKPを使えば、取引の内容を明かさなくても、「この取引はルールに沿って正しく行われている」ということだけを証明できます。 結 中身を見せなくても正しいってわかるなんて、不思議ですね。 江輝 実際の仕組みは数学に基づいたもので、たとえばZcashという通貨では、送信者・受信者・金額といった情報をすべて非公開にしながらも、その取引が正当なものだということをブロックチェーン上で証明しています。ZKPを使うと、トランザクションの中で何を公開し、何を隠すかを細かく制御できるようになります。取引はブロックチェーンに記録されますが、記録されるのは「証明結果」や「暗号化されたハッシュ」だけで、内容そのものは公開されません。 結 えっ、それでも「本当にちゃんとした取引だ」ってわかるんですか?なぜなんでしょうか? 江輝 そうですね。ZKPをイメージしやすいたとえとして「迷路の証明」があります。たとえば、大きな迷路があって、ゴールにたどり着けるのは正しいルートを知っている人だけだとしましょう。証明者はそのルートを誰にも見せずに、入り口から入って出口から出ることで「ルートを知っている」と示せます。中のルートは秘密のまま、ゴールに着いたことだけが確認されるわけです。 証明者は迷路に迷わずに出口にたどり着くことで、迷路を開示せずに正しい道を知っていることを証明する。 結 あっ、なるほど!出口に出てきたところを見せれば、通れたってことだけがわかるんですね! 結 でも、本当はルートを知らなくても、運よく抜けられることもあるかもしれませんか? 江輝 いい視点ですね。ゼロ知識証明では、「偶然」や「まぐれ」で通り抜けられたかどうかを防ぐために、迷路の出入りを何度もランダムに繰り返してもらうような工夫がされています。つまり、たった1回の成功ではなく、繰り返し正しい行動を見せることで、ルートを本当に知っていることを数学的に確率的に保証するのです。 結 それなら、偶然に抜けられたということもなくなりそうですね! 江輝 この技術を使えば、医療記録や企業間の契約のように、見せたくない情報を守りながらも、それが正しい情報であることだけを証明できます。また、スマートコントラクトと組み合わせることで、「18歳以上である」ことを証明しながら生年月日は隠す、などの応用も可能です。 結 秘密のまま、信頼だけ伝える…まさに未来の仕組みですね! 江輝 はい。ZKPは、これからのブロックチェーン技術の発展を支える柱のひとつとなるはずです。 結 技術って、人を疑わなくて済むようになる仕組みでもあるんですね。 江輝 まさにその通りです。「信頼をコードにする」ことが、ブロックチェーンの本質ですから。 4. ブロックチェーンの未来 江輝 最後に、ブロックチェーンの将来について、より発展的な観点から考えてみましょう。第3章では、すでにビットコインやNFT、ゲーム、投票、医療、物流など、さまざまな分野での応用例を見てきましたね。 結 はい、あれを見て「こんなにいろんな使い道があるんだ!」ってびっくりしました。 江輝 これからは、そうした「点」の活用が「面」になっていく時代です。つまり、個別のサービスにとどまらず、都市全体、国全体をまたいだスケーラブルなインフラとして、ブロックチェーンが統合されていくのです。 都市全体、国全体をまたいだスケーラブルなインフラとしてブロックチェーンが統合されていく。 結 国全体って、どういう感じなんでしょうか? 江輝 たとえばエストニアという国では、国民のID、健康記録、投票、税申告といった行政サービスがほぼすべてブロックチェーン基盤で支えられています。つまり「自分のデータを自分で管理し、必要なときだけ安全に開示する」社会が実現しつつあるのです。 結 え!もうそんなにブロックチェーンが普及している国があるなんて驚きです! 江輝 日本でも、教育分野で卒業証明書のブロックチェーン化や、地域通貨に応用する実験が進められています。世界では「ブロックチェーン国家」や「スマートシティ構想」といったキーワードも出てきています。 結 じゃあ、将来は「ブロックチェーンに対応していないと困る社会」になるかもしれませんね。 江輝 その通りです。そして同時に、課題も出てきます。プライバシー保護と透明性のバランス、法整備、技術標準の統一、そしてなにより「誰もが使えるUX(ユーザー体験)」の設計が必要になります。 結 技術だけじゃなくて、人間にやさしい仕組みにするのが大事なんですね。 江輝 はい。だからこそ、技術を知るだけでなく「それが人の暮らしにどう関わるのか」を考え続けることが、未来をつくる鍵になります。 5. まとめ 江輝 今回の講義では、次のような点を学びました。 ...

6月 19, 2025
にほんブログ村 投資ブログ ブロックチェーンへ 「#ブロックチェーン」人気ブログランキング